「カラマーゾフの兄弟」第6話(追記・訂正)

(※勲の「悪魔に魂を売った」の意味を解釈しなおしました。今までうまく原作とのリンクを含めて理解しきれていなかった)


末松、本領発揮。



【悪魔に魂を売った男・勲】
●チェルマシニャー買収計画
・・・ではなく、町はずれの土地の買収計画。
前に「杉卓工務店とのトラブル解消が、原作のイワンのチェルマシニャー行きか」とか書きましたが、それよりは、こっちのが原作でのチェルマシニャーの立ち位置に近い感じ。


「親父の頼みを断って、自分の道を行く決意をしたイワン」ってくらいの共通点だけども。



●悪魔に魂を売っていたことに気付いた勲
海岸に満を呼び出し、久留美の件を謝罪し、そして、「自分はもう加奈子のそばにはいられないから、兄さんには加奈子に誠意を見せてやってほしい」と告げる。


勲が言う「悪魔に魂を売った」とは、文蔵に上記の買収計画を持ちかけられた後の勲の葛藤する様子を見て「文蔵の仕事をずっと手伝っていくことを決めたこと」かと思ったのだけど、翌日にはあっさり地元の弁護士名簿を渡して東京へ帰ってしまうので、これは多分違う


恐らく「文蔵と契約して援助してもらうことになったときには、既に自分は悪魔に魂を売っていた」ということに勲は気付いたんだろう。


そして、勲は「悪魔に魂を売った状態を続ける」のではなく、「悪魔から離れる」ことを選ぶ。
翌日には勲は文蔵の元から永遠に立ち去るための行動をとる。その結果が、「もう加奈子のそばにいてやれない」なのではないか。



原作では、勲のモデルとなったイワンの台詞に、


「この人(※加奈子のモデルとなる「カテリーナ」という女性)が僕をそばに引き寄せていたのは、ひっきりなしに復讐したいためだったのさ。ドミートリーから絶え間なしに受けていた侮辱の恨みを、僕に向けてはらしていたのだ」
「ぼくはもう遠くの方に行ってしまって、もう二度と帰ってこないんですからね」


というものがあります。


これらは、素直に劇中の勲の台詞

「加奈子は俺のを苦しめることで、兄貴に仕返しをしているだけなんだ」
「おれはもうそばにいてやることができないから…」


につながると思います。


カテリーナへの恋心を抱え苦しむ「イワン」、そして、フョードルとカラマーゾフ家から離れて新しい生活を始めようとモスクワに出向く「イワン」を、現代のドラマの「勲」へ綺麗にリンクさせてくれたと思います。





●狂気
その晩、狂気に満ちた笑みを浮かべながら、小説を書く勲。


「時は来た」「支配は崩壊し、新世界がやってくるのだ」


文蔵の元から離れられる自身のこと書いているのか、文蔵の死後というこのドラマ全体の流れを暗示しているのか。
とはいえ、この小説を書いている時点ではまだ文蔵に名簿を渡してないので、まだあの文蔵から自由になれる確証はないので、前者は薄いとは思いますが……。


「悪魔に魂を売った」ことに気付き、そこから離れようとしている勲ですが、実は、このとき既に原作でイワンを蝕む「悪魔」が、勲のもとに訪れていることを示しているのかもしれません。


それにしても、文蔵の支配に苦悶する顔、加奈子といるときの哀愁漂う顔、そしてこの狂気の笑みとこのドラマの市原隼人は百面相です。



【翻弄される男・満】
●久留美の孤独の理由
借金を抱えた父に棄てられた過去を持っていた久留美
金への恨みが募り、金にすがりつくのではなく金を利用してしまおう、自分の全てを使って自分の享楽のためだけに金を使ってやろうとして生きてきたと満に告白します。


こんなにぺらぺらしゃべってくれる久留美を、もうちょっと満は疑った方がいいと思います・・・というおせっかいは置いといて(


留美の元恋人…ではなく父親がこのドラマにおけるムシャロヴィチだと思われますが、この父親と満の接触はあるのでしょうか?



●『数学的証明』
満が去り際に加奈子宛に書いた手紙。

「人生を変えるために俺にはやらなきゃいけないことがある」
「全てが終わったら借りた金は必ず返す」


ドミートリーが酔っ払って書いたあの手紙ほど露骨ではありませんが、読みようによっては文蔵を殺害して金を奪うことをほのめかすものではないかという疑惑に結びつけられそうです。
この手紙は、あのドミートリーの殴り書きから来ているのでしょう。


・・・といってもこの手紙だとあくまでほのめかすくらいなので、裁判の場で加奈子が突然これを持ちだしてもあれくらい結論がひっくり返るかはわかりませんが(笑)



【恐るべき真犯人・末松】
●「鶏肉(かしわ)はあまりにからからになりすぎて、とても噛みこなせるようなものでなかった」

スメルジャコフが癲癇を起こす前だけど、こんがり焼き上がった鶏肉を食わされる文蔵( パンか何かを投げつけられる末松(
大したシーンじゃないけども、ちょっとにやりとしてしまいました。


●「賢い人とはちょっと話すだけでも面白い」
末松「文蔵様と満様との関係がこじれてしまった今、間に入れるのは勲様だけです!」
末松「勲様がいなければ、この家の均衡が崩れます!」


涼や小栗への信頼は0ですか、そうですか。


ではなく、突然出かける準備をした勲をなぜか必死に止める末松。言い回しが怪しくてなりません。
お出かけになるんですか? 勲さまの留守になにか大変なことが起こるかもしれませんよ? それとも勲さまは文蔵様が殺されることを望んでるんですか? 


「この家がどうなろうと知ったことか」


…と、内心文蔵が殺されることを望んでいるどころかあまりにあからさまな勲を見て逆にドン引きして、道を開ける真犯人・末松(ぇ




●満に久留美の来訪を吹き込む
末松「ただ、旦那様は今夜いらっしゃると仰ってました」


(ぅ ° д ° )ぅ


使用人さん、使用人さん、ある人を騙した人間の来訪を、当の騙された人に向かって普通はそんなに簡単にしゃべらないよね。おかしいよね。


勲を引き留めにかかったあたりから、「末松いいやつだな。ひょっとして末松は犯人じゃないんじゃないか」という自分の中ににわかにあった考えはがらがらと崩れ去り、末松の評価がまさに穴倉への階段を転がり落ちるように下がって行きました。




●昔の使用人名簿から丸谷を涼へ紹介

もうやだ、末松が悪い奴にしか見えない(笑) 末松の行動一つひとつがすべて怪しい(笑)



涼を詩織の死の真相へ導き、久留美を餌に満を家におびき出し、勲から「この家がどうなろうと知ったことか」と文蔵の死を望んでいるかのような発言を引き出した(ん?)真犯人・末松!
今後のドラマのなかでどのような顔を見せていくのでしょうか?



【詩織の自殺の真相】
●マルファ登場
マルファさん・・・ではなく丸谷さんが母親の自殺の理由を涼に話してくれます。


●金のために妻を売った男
詩織の自殺の理由は「取引を有利に進めるために詩織の体を利用した」「そのため精神疾患になった」ためということです。
さすが文蔵、およそ普通の夫のすることとは考えられません。


…なのですが、あの文蔵のことなのでもっとなにかしらやばいものじゃないかとを想像していたので、それを聞いたとき、一瞬「なんだそんなことか」と思ってしまいました( やばいです、すっかり文蔵のムードにやられてます(


それにしてもドラマスタッフも原作でソフィアの死因が書かれていないことをいいことにこんな描き方をするとは。


・・・それでもどうして詩織はこんな文蔵の元なんかに縛り付けられていたのだろう? よほど無一文でも逃げ出した方がマシな気がする。何か弱みを握られていたのかしらん。



【次回予告】
●文蔵を殴りつける満
入江の言ってた「爪の先から出た犯人のものと思われる」証拠はここでついたのか。


●満「取り返しのつかないことをしちまった」
多分小栗を殺してしまったのではないかと動揺しているものと思われます。





●勲、烏目町に戻ったにもかかわらずなぜか電話で文蔵の死を知る
運ちゃんに戻れと行った割に戻った先は黒澤邸ではなく、街中・・・何をしていたのでしょう?

●満「誰も知らない所へ行ってゼロからやり直そう」
●何ものかが黒澤家に火をつける
●涼、裁判の証拠書類を奪って逃走
●「私も殺されかけたんですよ・・・」と涙声で語る真犯人・末松


原作では、ドミートリーがフョードルの屋敷に忍び込み、グリゴーリーを殴って逃走、その後、グルーシェニカを追ってモークロエに向かう場面です。

7話も楽しみです。