被曝労働問題・原発を考える会+交流会

9/8、都内某所で行われた勉強会。ツイッターで流れていた参加募集に応募してみた。
本当に今更のようだけど、原発関係の勉強会に参加するのは初。

労働法・労働問題からだいぶ遠ざかってしまった自分だけど・・・ともかく原発を存続するにしても廃止していくにしても、そこで働く人の現実をちょっとでも知ることができた、非常にいい機会だった。


今回お話してくれたのは、「被爆労働を考えるネットワーク準備会」のなすびさんと中村光男さん。

常に被爆の危険を伴う作業にも関わらず放射能に関する教育も満足な防御も施されず、社保その他労働者としてあるべき保護も受けられず、そればかりか多重下請け構造の中で給与も幾度もピンハネされ・・・と、何も知らずにいいように利用されて使い捨てられてきてしまった日雇労働者たちの現実は重かった。
原発の中では(中央制御室などをのぞいて)そこで働く人たちを守るべき全てが杜撰だった。「一定の割合で死ぬことが前提となっている労働」というなすびさんの言葉はぐさっと来るものがあった。


それから、事実を調べてみればまさに多重請負や偽装請負といった違法労働地獄でもあった原発労働だけど、近年これだけ不安定な雇用形態におかれた労働者の問題が叫ばれているのにもかかわらず、今回の原発事故が起きるまで原発で働く人たちのことはあまり目を向けられてこなかったように思う。
2007年、08年と首都圏青年ユニオンの「青年雇用集会」に参加した時さえ、原発労働の話は分科会でも全体会でも一切耳にしなかった。
よく言われる「新自由主義的な政策が推し進められてきた結果生み出された弊害」的な流れ(利益第一主義の経済界と雇用の調整弁として使い捨てられる非正規労働者・・・みたいな)に乗りにくかったからだろうか。

同時に、放射能の影響や原発の存廃などの議論の中でもあまり表だって話題にされてこなかったような気がする。
間違いなく違法労働の犠牲者でありつつ、物理的な意味でも原発に一番近いところに存在し続けていたのに、何でこの人たちのことを置いてけぼりで考えてきてしまったのだろう?


一方で、「原発で働かなければ生活してこられなかった人がいる」という現実も存在する。
原発が地域に産業として雇用を生み出しており、原発がなくなれば明日の自分や家族の生活が危機に瀕する人も確かにいる。被爆だの待遇だの云々の前に、まず生きるための労働を行わなければいけない人がいる。
さらに、そういった日雇労働者労働組合がであえる場所もなく、自分たちが直面している問題について話すということもできてこなかったようだ。(これらが、被爆労働問題を運動として進めてこれなかった理由の一つでもあると、なすびさんはいっていた)。

被爆労働問題をどのように労働者を守る運動に結び付けていくかも課題のようだ。
原発のある地域の産業や雇用の問題を合わせて考えなければならない。


さて、こういった原発の話を聞くと思いだすのが、昨年夏ごろの「週刊金曜日」にて、中島岳志さんが作家の重松清さんとの対談のなかで言っていたこと。

原発を支えてきたのは私たちです。東京の過剰な電力消費の中で疑問を持たずに生きてきたことを忘却してはならない。問題の中心に自己の日常があるはずです。だから自己と対峙しないといけない」

中島岳志さんは、「叩くのは簡単だけど、絶対的な敵を外部に求めるのでは単なる不満のはけ口になってしまう。今までの自己の日常と向き合うことが大事。」みたいなことをいっててこれは非常に共感した覚えがある。
勉強会後の交流会でもなすびさんがそんなことを言ってた気がした。

中島さんが言うように電力消費のこともそうだったのだけど、原発なしにはやっていけない人や地域が存在すること、原発がそのように地域と不可分のものとして作られてきてしまったことを全く気にもとめずに自分たちは生活してきたことも、やっぱり「今までの自己の日常と向き合うこと」なのだと思った。
昨年福島で観た「東京原発」という映画で、役所広司演じる天満東京都知事が「傍観者でいることは賛成していることと一緒だ」と言っていたっけ。



けれども、そう思ったところで、これから何ができるか・・・というところで、今までもできている自信はあまりないし、いつもどおり(?)問題の大きさに途方に暮れて、俺はちょっと立ち止まってしまっているのだけど・・・。
ただ、どういう話の流れだったのか覚えていなくて恐縮なのだけど、手元のメモに「『過疎』『貧困』『格差』『差別』、これらの解消なしには原発はなくせない」とあって、これが考えるヒントになりそうだ。


終わった後のファミレスでの交流会も面白かった。いろいろな人と話せてとても刺激になった。次はもうちょっとうまく考えて、自分の意見を言えたらいいな。


なすびさん、中村さん、お話しいただきありがとうございました。ちゃーりーさん、セキさん、スギモトさん、運営お疲れさまでした。貴重な機会をありがとうございました。

追記:被爆労働についての本を何か1冊読んでみたい。