歴史教科書への疑問―若手国会議員による歴史教科書問題の総括

日本人の歴史認識はいかにあるべきか。教科書に端を発した従軍慰安婦問題などをめぐり、河野元官房長官や石原前官房副長官、外政審議室室長や教科書課長など、民間では招き難い講師も招聘して開いた若手議員の「勉強会」の模様を、緊迫した質疑応答も含めて初公開。「近隣諸国条項」や「河野談話」などの資料も収載。(Amazon)

第4章の「『慰安婦記述』をめぐって」の吉見義明教授と藤岡信勝教授の講義を読んでみたくて、中古で買った。中古でないと買う価値はないだろう。
メンバーには安倍晋三、中川成彬他、講師にも西岡力藤岡信勝など、名前を見ただけで憂鬱になってしまう面々が並んでいる。
逆にいえば、平成9年当時、このメンバーがどのような活動を行っていたかを知る資料にもなる・・・んだけど、途中で読むのが嫌になってしまった。


吉見教授の講義内容は、既に見覚えがあるのでここでは割愛。「従軍慰安婦」(岩波新書)、「従軍慰安婦をめぐる30のウソと真実」(川田文子氏との共著、大月書店)にもっと詳しく描いてある。

しかし、藤岡信勝の「マスコミがキャンペーンを行い、それによって『旧日本軍が奴隷狩りの強制連行を行った』というイメージが作り出した」、「強制連行の根拠がないことが分かると、問題の焦点は強制連行ではないと言い出した。いつの間にか奴隷制の話になった。議論がすりかえられた」、「未確定な時事的問題、論争的な問題について、あたかも、事実が確定しているかのように記述するのは、この教科書用図書検定基準に照らして誤り」、「吉見教授は結論ありきで資料を探してくる。しかし、その資料はたいした問題じゃない」、「『陸支密第七四五号』は“いい関与”」などの(今では見慣れてるものばかりだけど)デマには、怒りに近いものが沸いてしまった。(引用は長いので、ところどころ要約)

おかげで正直、他の章も読みたくなくなってしまったくらいだ。
この藤岡の講義を、当時吉見教授はどのような気持ちで聴いていたのか。

「強制連行の有無」を否定すれば全てを否定できるような物言いをはじめ、こういう右派連中が旧日本軍の戦争犯罪を矮小化する手法は、昔から何も進んでいないようで、ほとんどをどこかで見たことがある。
ただ、同時にとても悲しいのは、日本社会の認識も当時の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会 」の認識から別段変わっていないであろうことだった。